読書から、穏やかな心を

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『極アウトプット 「伝える力」で人生が決まる』 感想

精神科医・樺沢紫苑先生が10代向けに書かれた『極アウトプット 「伝える力」で人生が決まる』を読みました。

本書を読み、自分の10代のころの情景が目に浮かびました。10代は体と心が大きく成長し、それに伴う苦悩がつきない時期であると考えています。私は10代の時に自分を見失いました。それから30歳を超えるまで、自分はいったい何者なんだろうと考え続けていました。しかし、著書を読み、その答えを見つけることができましたので、ここにまとめます。

 

気づき「人間関係を深めるためには、自分はこういう人間だと、旗を立てること」 

私は小さいころから勉強が好きでした。しかし、高校生になったある日、テストの点をクラスの子に見られ、「キモイ」と言われました。部活の先輩からも「生意気でむかつく」と言われたり(笑)

今考えれば冗談だったかもしれないし、「キモイっていうな」と言えばすむ話で。先輩に色々言われても、心の中で「ハイハイ」と思えばよかったのですが、勉強を一生懸命することは恥ずかしいことなんだ、今までの自分ではだめなんだと思ってしまいました。

それからはテストの点数を隠したり、賢そうなことは絶対に言わないようにしなきゃとか、目立つことは絶対にしないようにしようって思ってきました。でも、そうしていると、自分が自分でなくなり、何をしているのかもわからなくなっていきました。自分が迷走していたので、付き合う友だちも迷走していましたね。学校にあまり来ない子だったり、気がついたら退学していた子だったり。

 

しかし、本書に決定的なことが書かれています。

・どんな人間かという情報がなければ他の人から好かれることもない。人も集まってこないから、主従関係のような「居心地の悪い輪」に入るしかなくなる

・人から好かれるためには長所を生かして相手に喜ばれることを意識していれば、「嫌われたくない」というマイナスの感情も徐々に減らしていくことができる

そうだったんだと、納得するしかありませんでした。10代のこの時からずっとずっと悩んでいた理由が、はっきりと見えました。誰からも嫌われたくなくて、自分がどういう人間か、伝えようともしなかった。そして、人に喜ばれることを意識することもしなかった。それは、自分から行動(アウトプット)しようとしなかったからなんですね。

 

嫌な思い出しか残っていませんでしたが、そんな時期でも、私の前の席の男の子が「この問題教えて」と言ってきたことがありました。私はその子が理解できるように丁寧に説明しました。その時、とても喜んでくれた表情を思い出し、なんだ、そのままの自分でよかったじゃない、と目頭が熱くなりました。全ての人に好かれるのは無理。たった一人でも自分を好きになってくれたら、それは素晴らしいこと。私は何年もの間、そのことに気づけずにいたのです。

 

この本を読み、最近仲良くなった友人に思い切って私の文章を読んでもらいました。私はこういう人間だと知ってほしくて。それで嫌われても、自分は自分らしくありたいと思いました。そうしたら友人は、もっと私のことを知りたいと言ってくれて、私たち2人が大好きな朝のカフェで会う約束をすることができました。なんとも嬉しい瞬間でした。

 

本書には「話す」「書く」「行動する」というアウトプットの具体例がとても詳しくわかりやすく書かれています。そして「伝える力」で人生が決まると。読んだ今、その通りだなと感じています。今10代の人はもちろん読んでほしいし、大人でも十分楽しめる内容になっています。私は10代の辛く苦しい思い出が、少し明るい過去へ変わりました。「私はこういう人間だ」ということが言えなかっただけだったよねと、ラベルが貼り替えられています。ぜひ、ご一読ください。