読書から、穏やかな心を

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『親の期待に応えなくていい』 感想

演出家でもある鴻上尚史さんの『親の期待に応えなくていい』を読みました。こちらも小学館から出版された10代向けの本です。しかし、30代になっても親の期待のプレッシャーを感じている私にとっては、どうしても読みたい1冊でした。一人の娘としての気づき、そして親としても気づきを得たのでお伝えします。

 

気づき①親がいちばん的確なアドバイスができるとは限らない

熱狂的なファンが押しに的確なアドバイスが送れるとは限らないのと一緒です。「その人を一番よく知っていること」と「その人に1番役に立つアドバイスができる」ことは違うのだそうです。

私は3月で退職しました。辞めてからも母からは「あなたは専業主婦に向いていない」と言われています。ですから、私はずっと家にいて、子どもと向き合うことは性に合わないのかもしれないと不安でした。母が私のことを一番よく知っていると思っていたからです。しかし、退職して1週間以上経ちますが、虐待することはなく、むしろ働いていた時より楽しい時間を過ごせています。この一文を読んで、「親が正しいわけじゃない」ということに気づくことができました。人は一人ひとり思考が違う、だからすべて分かり合える親なんていないし、親と子が考えていることが違っていることは間違ったことでもないのです。母はそのように考えていても、私がそれでいいなら、それでいいと思うことができました。今は、自分を信じ退職してよかったと心から思えています。

 

気づき②肯定されて育った子は健康的に自立しやすくなるが、否定されて育った子は自分に自信が持てず、親に依存したり、自分を傷つける。

無条件で愛された記憶、ただぎゅっと抱きしめられた記憶があるとないとでは、あとあと大きく違ってくるそうです。

今度は親としての考察です。今までも娘には否定的な言葉を言わないように留意してきましたが、無条件の愛について考えたことがありませんでした。抱っこと言われたら抱っこしていましたが、言葉かけにばかり気を取られていたかもしれません。娘には自分で考え、行動できる自立した人間になってもらいたいと思っています。そのためには、子どもの記憶が残る年齢まで、いえ、いくつになっても、愛おしいと、そこにいるだけで価値があるのだよと、抱きしめたいと思いました。

 

気づき③子どもの人生が失敗なのかどうか判断するのは子ども。

「若くして専業主婦になってつまらない人生になったから、あなたには結婚は後回しにして人生を謳歌してほしい」「一流大学に入ってほしい」「お金に困らない生活を送ってほしい」ーこれらは、すべて、親が自分の考え方を押しつけている。自分の人生を変えないまま、子ども人生を変えようしているということ。

これはとても耳が痛い話です。なぜなら、私にはこういう思考がめぐっていたからです(涙)。個人競技は孤独だから、できれば団体競技を選んでほしい。看護師は辛いことも多いから、違う職業を選んでほしい。夫は、手に職をつけてほしいから看護師になってほしい…(もはや意見が分かれる…)という親の考えの押しつけが今から始まっていました。反省です。

そもそも、これでは私は自分の人生を否定しています。自分を否定する親の期待に応える必要なんかないわけです。まずは、私自身がこれまでの人生を肯定する必要があります。そして、私は私の人生を充実させていきます。こうして文章を書き、誰かの心に何か届くものがあったらそれは本当に幸せなことです。書くことをこれからも大切にしていきます。そして、言いたいことをグッと我慢し、娘を見守っていける器を持てる親になりたいと考えています。

 

さいごに。この本の後半には、親を裏切ってしまうのではないかという罪悪感の正体、世間体について書かれています。その罪悪感を取り除く一つとして①の続きになりますが「親のアドバイス」と「親を大切にすること」を分けると述べられています。一時は分かり合えない母ともう連絡を取り合わない方がいいのではと考えたこともありました。しかしそれはゼロヒャク思考、とても辛いことです。やはり私は母を愛しています。母にとって私は、看護師として働くことが100点だとしたら、今は0点かもしれません。その部分は分かり合えないかもしれないけど、私は実家に帰って孫の顔を見せたり、一緒に温泉に行ったりして楽しく過ごしたいです。10点でも、20点でも、そんな点数でもそれなりにやっていけたらいいなと思っています。そんなふうに、コミュニケーション能力の高い大人になっていきたいです。

 

子どもの立場で読んでも、親の立場で読んでも学びの多い一冊です。私の3つの気づきが、どなたかの気づきになったら嬉しいです。

 

親の期待に応えなくていい(小学館YouthBooks)