読書から、穏やかな心を

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『精神科医が教える 病気を治す感情コントロール術』樺沢紫苑著 読書感想文 ~家族の看病を振り返る~

「家族の介護・看病は7割の力でいい」と本書に書かれている。
「そうか、そういうことだったのか」と、長年抱えていた疑問が解けた。

今から9年前、家族が病気になった。
まだ26歳だった私は「当人の苦しみを共有すべき」「私が頑張らなくてはならない」と思い込み、全力で支えようとした。
仕事が終わってから、面会時間ギリギリまで毎日会いに行った。
「辛い」と連絡があれば、いつでも駆け付けた。
入院生活がいつまでなのか見通しがつかず、病気が治るのかもはっきりしない状態に、私の体も心も徐々に疲弊していった。
看護師として働く私は、病状が悪くなっていく患者さんと家族を重ね、号泣し、ナースステーションで崩れ落ちることもあった。

治療期間は長く続いたが、その甲斐あって退院することができた。
徐々に元気になっていく家族を見て、私も笑顔を取り戻していった。
今、家族の病気は治癒し、あの頃が嘘だったように元気に暮らしている。

ただ、「あの時、私はいったいどうすればよかったのだろう」と、ふとした時に思う。
「そんなこと忘れて、今を楽しく生きよう」と考えてもいいかもしれない。
でも、私の大切な人たちが病気になることは、この先も必ずある。
そうした時に、また自分が壊れそうになってまで看病するのだろうか。
そんな不安がずっと心の中でざわついていた。

しかし、この度読んだ『病気を治す感情コントロール術』に病気の患者を持つ家族への処方箋が書かれていた。
「必死になりすぎない」その言葉に胸を突かれた。
退院したあと、「正直なところ、あなたがすごく必死だったから、自分ってそんなに悪いのかなと不安になった」と家族から言われたことを思い出した。
自分の趣味、友人との時間も放り投げて、毎日病室に足を運んでいたのだ。
私の必死さが家族に伝わり、不安にさせていたなんてと愕然としたが、事実に変わりはない。
それに、自分の時間を犠牲にし、あのまま看病のトンネルが抜けなければ、私はうつ病や、体の病気になっていかのかもしれない。

さらに本書には「介護・看病は7割の力で」「手抜きではなく、ペース配分」「気分転換も必要」と書かれている。
全力で突っ走ることが正しいとは言えない。
必死でそばにいることが患者にとっていいとは言えない。
本書を読み、このことがよくわかった。

いずれまた、介護や看病をしなくてはならない日がくる。
その時のために、心に留めておきたい処方箋だ。
著書は過去の自分を救ってくれた。
樺沢先生、ありがとうございました。

 

精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術

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